墨の戯言6~「古典・新作落語事典【補遺】」その3:2020.04.28.
拙著『古典・新作 落語事典』の【補遺】その3は、左甚五郎物から『掛川の宿』です。
演じられる頻度からすれば、浪曲のイメージが強くもありますが、二人の名人上手が邂逅し、そこで騒動を巻き起こすといった滑稽な姿は、いかにも落語といった感じが漂います。
飛騨を去り、大阪から江戸へ向かう甚五郎譚の一席です。
尚、今回も検索ワードのカスタマイズは、よろしくお願いいたしますw。
《か》
掛川の宿(かけがわのやど)
【種別】 滑稽、旅
【別題】 左甚五郎掛川の宿(ひだりじんごろうかけがわのやど)、掛川宿(かけがわしゅく)
【あらすじ】 東海道は掛川の宿。遠州屋という本陣宿の「この三日間はどなた様もお泊めできません」という張り紙を、年の頃なら70歳前後の汚い格好の老人が目に留め、泊めてくれと言ってきた。宿の者が尾張の殿様が宿泊するので泊めることはできないと言うと、泊めてくれなければ店の前で首を吊ると言い出すので、宿泊賃は1両であると吹っかけると、老人が言われた金を出してきたので、普段は物置にしている汚い小部屋へと案内する。そこへ続いてやって来たのが、これまた薄汚れた格好をしている左甚五郎。先の老人と同じようなやり取りをして、女中から受け取った酒を持って、老人の部屋へと入る。老人と甚五郎は互いに挨拶も交わさないが、甚五郎が持ってきた酒を酌み交わし、一つの布団で背中合わせに寝ることに。夜中に目を覚まして用を足そうとした老人が、尾張侯の宿泊する離れの座敷を見つけると、そこに金屏風があったので千羽の雀を見事に描き上げた。同じように目を覚ました甚五郎は、離れの座敷の金屏風を目にし、あの老人が狩野探幽であることを知る。そこで甚五郎は自分もと床柱に大黒を彫り上げた。そして甚五郎が宿を逃げ出すことにすると、後ろから探幽が追い掛けてきた。離れの一件を知った宿の主人が驚いて、奉公人に二人の後を追わせると、甚五郎と探幽は宿場を出たところで煙草を吸っていたので、連れて帰って裏庭の松の枝に縛り上げた。そこへ尾張侯が到着して、離れの座敷を見て驚く。尾張侯は二人が左甚五郎と狩野探幽であり、もしも二人に無礼があった時には、さらし首だと主人に言う。二人を何とかなだめることができてホッとした主人が番頭に「全て尾張のお殿様のおかげだ。きしめんでも作って、おもてなしをしようか」「きしめんは止めた方がいいです。今度こそ、手打ち(手討ち)になります」。
【解説】 元は浪曲ネタで、初代京山幸枝若から教わったという笑福亭鶴光が演じている。左甚五郎ネタの中でも、途中まで甚五郎の素性が分からないというのではなく、この噺では甚五郎が金屏風に描かれていた絵を見て、先に宿泊していた老人が狩野探幽であることが明かされるという展開である。
※検索ワード※
場所・舞台→遠州屋、掛川宿、東海道、離れ、本陣(本陣宿)
職業・人物(普通名詞)→主人(店)、番頭、老人、
職業・人物(固有名詞)→尾張侯、狩野探幽、左甚五郎
食べ物・嗜好品→きしめん、酒、煙草
行事・行動・習慣→宿泊、逃亡
事物・事象・その他→金屏風、床柱、張り紙、布団
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