墨の戯言5~「古典・新作落語事典【補遺】」その2:2020.04.27.

拙著『古典・新作 落語事典』の【補遺】その2は『お玉牛』です。

やはり上方落語のイメージが強く、「東西落語研鑽会」@有楽町・よみうりホールで聴いた、三代目桂春団治の好演が忘れられません。

かつては寄席の高座で二代目桂小南師匠も演じていましたが、最近、若手が取り組むようになってきているので、ご紹介します。

尚、検索ワードのカスタマイズは、よろしくお願いいたしますw。

《お》

お玉牛(おたまうし)

【種別】 滑稽、艶笑

【別題】 堀越村のお玉牛(ほりこしむらのおたまうし)/堀越村(ほりこしむら)

【あらすじ】 堀越村に与平次とお累という夫婦が仲良く暮らしていた。ある雪の夜に父娘がやって来て、泊めて欲しいと行って来た。村のお触れで旅人は泊めてはいけなかったが、父の具合が悪いということで、二人を泊めると、翌朝、父は冷たくなっていた。娘は一人になってしまい、行くところが無くなってしまったので、お累の妹であるお玉が帰ってきたことにして、与平次夫婦のもとへ置くことにした。お玉はお累と違って美人なので、村の若い者の間で評判になり、茂兵衛という男がお玉を無理に口説いて、夜這いに行くことを約束させてしまった。お玉の方では与平次と相談をして、お玉の代わりに牛を部屋の布団に寝かせておくことにした。夜になってやって来た茂兵衛が布団の中に手を忍ばせて、牛とも知らずに撫で回していると、牛がひと鳴き。驚いた茂兵衛は表へ飛び出して友達の集まる場所までやって来ると、「お玉をウンと言わして来たか」「いや、モーと言わした」。

【解説】 元は上方落語で、東京では二代目桂小南が演じており、所属していた落語芸術協会の若手に引き継がれている。最近では前半の父娘(侍と娘という設定もある)の件が省略されて、堀越村の若い衆がお玉の噂をしていると、そこへ茂兵衛が現われて、という展開が多くなってきた。原話は不明であるが、上方落語の『おたおたの太助』が東京へ伝わたものが、明治時代に『牛の嫁入り』と題する初代三遊亭圓遊の速記が残っている。その噺では、婿探しをするのに、神社に日参している娘がいることを知った与太郎が、神様に成りすまし、自分を婿に取るように話をする。与太郎の希望で娘を長持ちに入れて嫁入りさせると、長持ちを運んでいる人足が疲れて酒屋で一杯。そこへ牛を曳いた男が現われ、事情を聞いて娘の代わりに牛を入れることにした。暗い中、与太郎が長持ちの中をまさぐり、最後に尻尾を引っ張って、「う~ん、大変に長い髪だ。大方、下げ髪で来たんだろう」。また、牛の尻尾を引っ張ったので牛がひと鳴き。驚いて知り合いのところにやって来ると、「どうした?」「暗闇から牛を引っ張り出しました」といったサゲもある。


※検索ワード※

場所・舞台→堀越村

職業・人物(普通名詞)→美女、夫婦、若い衆

職業・人物(固有名詞)→おたま(お玉)、お累、茂兵衛、与平次

動植物→牛

行事・行動・習慣→噂、求婚、交代、夜這い

事物・事象・その他→布団、鳴き声、騙す

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