墨の戯言4~「古典・新作落語事典【補遺】」その1:2020.04.26.

コロナウィルスの感染拡大を封じるための自粛期間に、実はピッタリの読み物があります。それは拙著『古典・新作 落語事典』(丸善出版)www。

現在、演じられている古典落語と新作落語を700題、そのあらすじと解説を示すのとともに、「落語地名辞典」に、演題が分からない時には楽しみながら頑張ることで、その演題にたどり着ける細かい「索引」も付しています。ただし、新作落語を網羅するのは無理なので、どんな新作が掲載されているかは、「まえがき」や「凡例」「あとがき」をお読みください。

江戸・東京落語を網羅するつもりで書き進めたのですが、刊行後に復活した噺があったり、編集時に様々な理由からカットせざるを得なかった落語もあります。そこで、この場をお借りして【補遺】という形で掲載していきたいと思います。ただしちょっとだけ不定期で(笑)。

また、索引に反映できる「検索キーワード」も記しておきますので、みなさまでカスタマイズをしていただければ幸甚です。あ、『古典・新作 落語事典』につきましても、どうぞよろしくお願いいたします!

ということで、その一は『牛の子(うしのこ)』です。

《う》

牛の子(うしのこ)

【種別】 滑稽

【あらすじ】 田舎に家を建てて暮らし始めた男の元を兄貴分が訪ねた。田舎暮らしがいいのは、魚が食べたければ池ですくってくればいいし、野菜は田んぼで引っこ抜いてくればいいので、食べ物がタダのところだと言う。ところが牛乳が大好きなのに、近くの百姓が牛を飼っているのに自由に飲めないのが困っていると言う。すると兄貴分が、「牛の飼い主が知り合いで、信心深い人であるなら、『10日ほど同じ夢を見ているので伺いました。数年前に亡くなった母親が牛に生まれ変わって、こちら様でお世話になっており、お前に一目会いたいから来てくれというので来ました』と言って、乳の出そうな牛を見つけろ。額に塩を塗っておけば、牛は塩が好きでお前をペロペロ舐めるだろうから、そうしたら『久し振りに会った母親でございます』と言えば、向こうも気をきかせていなくなるから、そのまま乳を搾って来い」と教える。そこで、早速教わった通りにやってみるとうまくいったので、5日ほど経って再訪すると、先日の牛がどれだか分からなくなってしまった。そこで適当に見当をつけて、一頭の牛へ近付くと、百姓が「おまえさん、それは雄牛(おとこうし)だ」「ああ、おやじのほうでございます」。

【解説】 六代目三遊亭圓生の速記が残っている。『試し酒』を作った今村信雄の作とされるが、圓生によると、明治時代にできた噺で、入船亭扇橋(8代目か)が演じていたという。圓生の孫弟子にあたる三遊亭天どんが演じている。


【検索ワード】

場所・舞台→田舎、百姓家

職業・人物(普通名詞)→兄貴分、百姓、母親

動植物→牛、魚

食べ物・嗜好品→牛乳、魚、塩、野菜

行事・行動・習慣→嘘、おうむ返し、失敗、信心、舐める

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