墨の戯言3~桂圓枝と狂歌:2020.03.04.

墨亭を運営するオフィスぼんが所蔵の演芸資料より。

三代目桂圓枝(1931~2011)の昭和57年年賀状(戌年)。

圓枝師匠と言えば、所属する落語芸術協会の高座で『地球の裏表』『シルバーシート』『ジョークの効用』といった、新作落語というより、漫談や小噺の寄せ集めのような噺をよく聴いた。有名なクスグリで、就職試験の面接の場で「GNPとは何の略ですか?」「頑張れ、日産パルサーです」というのは、『ジョークの効用』の中の一節で、亡父が日産自動車に勤めていたこともあって、小さい頃はそれを聴くのがちょっとした楽しみであった。

そんな圓枝師匠だが、落語家になる前に地元の高松地方検察庁で働いていたこともあったせいか、チクッと刺さるような現代風刺のクスグリを取り入れることがあったのも思い出す。

そんな圓枝師匠が出した年賀状の中に、狂歌を見つけたので、ここに紹介。

今の内閣に通じる内容も……?

〈閣内に灰や桜をこきまぜて これぞ自民の意識なりける〉

〈怪し気な方が多くて閣内に 臨検席のしつらえてあり〉

〈荒海に面舵一杯初船出 危険をはらむ灰色の帆〉

〈中曽根やこの灰色の帆を上げて 行方も知らず風のまにまに〉

ロッキード事件で騒がれていた田中角栄の全面的な支持を受けて当選した、中曽根康弘の第一次内閣発足直後の賀状だけあって、その政治不信がうかがえるような句が並んでいる?

ご存命であれば、今頃、どんな句を詠んでいたのだろうかと、そんなことを思わせる一葉をご紹介。

※状面表は、宛先と住所が見えないように、他の賀状を被せています。

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