2020.02.23.「田辺いちかの会」

松之丞改メ六代目神田伯山効果もあって、講談がますます注目されている昨今。もはやブームとも呼べる講談人気は、勿論、これまで地道に活動を続けてきた先人達の歩みによるものですが、その一つに女性講釈師の活躍が挙げられます。

そして、墨亭にご出演いただいている女性講釈師であれば、神田紅佳さんもいますが、昨今、テレビで活躍をし始めているお笑い芸人を指して「お笑い第七世代」とするなら、いちか、紅佳の両人は「女性講釈師第四世代」と呼べるかも知れません。

第一世代は、東京の講談界で女性講釈師のトップにいる神田翠月先生に宝井琴桜先生。今となっては伝説の講釈師とも言える天の夕づる先生もそこへ入ってくるかも知れません。ここで挙げた講釈師達は、当時、講談界の衰退を憂えた“ヒゲの”田辺一鶴先生によるご尽力で生まれました。

その次の第二世代は神田陽子、紫、紅、すみれといった、二代目神田山陽門下にある各先生です。一鶴先生が門戸を開いた女性講釈師の道を次々に切り拓いていったのが先代の山陽先生でした。女性に合った講釈ネタや車読みというリレー形式で読む話等で、華やかな時代を築いた紅佳さんの師匠の世代です。

第三世代は紅佳さんよりちょっと上の真打世代で、いちかさんの師匠である田辺一邑先生がそこに入ってくるでしょうか。

そして今、二ツ目にある貞鏡、紅佳、いちか、紅純といった面々が、その「第四世代」に入って来ます。

実はこの「第四世代」に大きな期待をしています。講談にスポットが当たっている今、修羅場が読め、連続物にチャレンジし、先人達が築き上げてきた女性講釈を自分のものにする貪欲さといったものが見えて、東西や男女、更に世代間を超えて、新しいネタを仕込もうという気概が見えるからです。

いちかさんもそんな存在であり、強かでたくましい講釈師です。

前回の墨亭の高座では『安政三組盃』を3席立て続けに読み、今回は中入りを挟んで、『鎌田五左衛門』と『敵対母子連れ』の2席を披露しました。前者は戦国武将が登場する、実は私自身、速記でしか読んだことのない珍しいともいえる、講釈で言えば「堅い」話。後者はそれに対して菊池寛原作の「柔らかい」文芸物。

これは悪口や批判といったものではありませんが、比較的、これまでの女性講釈師というと、世話物や柔らかい話を中心に読んでいく人が多かった中、その両方を確かな形で読むことができるというのは、いちかさんの強みであり、魅力であると言えます。

時代の移り変わりの早い今、講釈の醍醐味が感じられる軍談物や修羅場といったものを好む人も少なくなっているのかも知れませんが、そうした話にも果敢に望んでいる田辺いちかさんによる講談の世界を一度味わって(墨亭でwww)もらいたいと思っています。

次回は4月26日の午後14時30分から「田辺いちかの会」を予定しています。是非。(雅)

墨亭 -BOKUTEI-

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