浪花節をレコードで聴く⑨

京山幸枝若『會津の小鉄・飯安殺し/小鉄と新門の出合い』(ローオンレコード)

●『會津の小鉄・小鉄と新門の出合い』:小鉄は飯安と勝負をつけるために、あえてお梅に輿入れをさせる。自分の家へお梅がやって来たことを喜ぶ飯安だが、迎える駕籠の中から出てきたのは小鉄であった。小鉄は持っていた名刀虎徹で飯安を斬り殺す……。江戸へ下る小鉄が大井川までやって来ると、いかさま博打で駕籠屋から仕打ちを受ける。その場を丁度通りかかった女性に助けられるが、それは江戸の火消し相模屋政五郎を兄に持つお絹であった。小鉄は相模屋の客分として迎えられ、寝る間も惜しんで働く三年の内に仙吉兄貴と呼ばれるまでになった。ある日、お絹のお供で市村座へ向かうと、芝居小屋から兄貴分の竹松が血まみれになって出てきた。なんでも「を組」の若い衆が酔っ払って暴れているというのだ。刃物沙汰はならないと言われていた小鉄は素手で退治をすることに。その次の日、小鉄は「を組」の組頭新門辰五郎のもとへ殴り込みに行こうとするのを、お絹は何も言わずに送り出す……。

●一枚目の、実はクライマックス部分である「飯安殺し」から始まる二枚目。「相政の出会い」に「小鉄と新門辰五郎の出会い・前夜」までが演じられている。侠客の対決場面とは言え、三味線を率いながらの幸枝若特有の明るさを失わないテンポ良い唄い調子だけに、悲惨な描写にならないのが強みであり、幸枝若の凄味を感じられる。事件が過ぎ去れば、じっくりと節を聞かせる調子に変わり、それが幸枝若のうまみへとつながる。小鉄が次の対決に向かっていく、その背中が見えるような余韻を残しながら、唸り終えるというのも幸枝若一流の切り方であり、続きはどうなるのかという期待を強く持たせる。『会津の小鉄』の名場面の一つ。曲師は藤信初子、小池菊江。(2021.09.13.)

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