浪花節をレコードで聴く⑧
京山幸枝若『會津の小鉄・飯安殺し/小鉄と新門の出合い』(ローオンレコード)
●『會津の小鉄・飯安殺し』:のちの会津の小鉄、17歳で上坂仙吉といい、梅ケ谷一家の世話になっていた頃の話。彼岸の日に四天王寺へ詣でると、一人の女性が四人組の男に連れ去られる寸前であった。それを力づくで止めてみせた小鉄。女性に名前を尋ねてみると、今は油屋久兵衛の娘であるが、実のところは、小鉄が三年前に飯安という親分に斬りつけ、逃げた先の伊賀で世話になった村上玄信斎の娘お梅であること。そして、その娘を襲った男たちこそ、飯安の子分であることがわかった。油屋は飯安からお梅を女房に差し出すように脅されており、業を煮やした飯安が子分に命じて連れ去ろうとしたのだ。一部始終を知った小鉄はお梅を助けることにする。
●初代京山幸枝若十八番の一席。会津の小鉄、本名・上坂仙吉は幕末から明治にかけて実在した京都の侠客。その若い頃に小鉄が名を売った事件を扱った場であるが、軽快で調子のよい幸枝若節に、その節を支え、更に節を押し出すようにテンポ良く弾かれる三味線の調子がまた気持ちよく、侠客物に漂う緊張感が失われずに物語が進められていく。節が良いだけに、「♪運と度胸と命を賭けた 晴れの門出の仙吉を 見送る辻の石地蔵 乗り込む先は二ツ井戸 ここは油屋久兵衛店 紺の暖簾を菅笠で 分けた姿の粋なこと」といったところで、小鉄の腹の据わった様子とまさに粋な姿がサッと見て取れるようである。タイトルには『飯安殺し』とあるも、実際に飯安を斬り殺すのは、二枚目の『小鉄と新門の出合い』。一枚目は強いて言うなら『飯安殺し前夜』といったところか。曲師は藤信初子、小池菊江。(2021.09.12.)
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