神田織音先生の講談をおススメしたい訳:2021.03.04
今、女性講釈(師)が、再び面白くなってきている。
私が講談に触れ始めた昭和50年代の後半は、二代目神田山陽一門の神田陽子、紫、紅といった講釈師が、高座ばかりでなく、メディアなどに盛んに出ていたが、講談界全体の注目度は、正直言ってさほど高くはなかったように思う。女性講釈師が一時期の講談界を支えていたとしたら、言い過ぎであろうか。とは言え、山陽一門の女性講釈師の登場以降、女性講釈師の数が増えていったのは事実で、近年、講釈界の男女数を変えるほどまでになってきたが、そうした風潮の中、今風に言えば、第三・四世代の女性講釈師の活躍が目覚ましくなっている。(第一次が山陽一門、第二次が一龍斎春水、貞友前後。翠月、琴桜は第ゼロ次。ただし要分析&検討)
墨亭出演者で言えば、神田菫花先生に、二ツ目では神田紅佳、田辺いちかさん。4月にご出演される神田真紅さんあたりは、第四次になろうか。そして、その第四次を牽引する(牽引して欲しい)のが第三次世代。芸歴20年選手である。具体的には、講談協会で言えば神田織音先生、日本講談協会で言えば神田阿久鯉先生あたりがそれにあたる。
阿久鯉先生の男性風な(と言ったら、今の時代、非難されるのか…。以下同)歯切れとテンポの良い口調は、松鯉一門にあって、講談をさほど知らない人でも、最近であれば伯山ティービー等でも知られるところかも知れない。女性にして講談の「漢」の世界を堪能させてくれる高座は個人的にも大好きで、墨亭の高座にも上がっていただきたいと思っている。
実は、今回注目したいのは、神田織音先生だ。
初めてその高座を見たのは、前座の頃だったが、その印象は可愛い!というものだった(ごめんなさい)。いわゆる古典講談も読めば、新作にも取り組み、ネタ幅も広い。今年に入って、滝沢馬琴の妻『滝沢路』、義士伝の内より『南部坂雪の別れ』を聴いたのだが、まさにその柔らかな口調にあって、男性の厳しいばかりでなく心優しい面と、たおやかな女性であるも一本芯の通った様を描いたりと、女性の目を通して講釈のたくましい世界を読む姿に、改めて強い魅力を感じた。
昨年、ご一門の神田翠月先生が彼岸へと渡ったが、翠月先生の魅力の一つは、女性でありがながら男の世界を真っ向にとらえ、男に負けない講談を読む姿であった。一方で、宝井琴桜先生は女性の視点から女性の生き方を見つける講談が魅力であるが、織音先生の高座はその両方を合わせ持ち、これまでとはまた異なった女性講談のあり方を示してくれるように思えてならない。そんな意味でも、第三・四世代を牽引していって欲しい講釈師であると思っており、特に未体験の方には、ぜひとも墨亭で織音先生の講釈の世界を堪能して欲しいと思った次第。ネタ出しこそお願いしていないが、「いい」講釈を聴かせてくれることは間違いない。
「神田織音の会 ~墨亭春の講談まつり~」
・2021年3月27日(土)11時開演、2500円@墨亭
※時節柄、ご予約願います。ticketbon@yahoo.co.jp
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