墨の戯言2~墨亭と伯山:2020.02.11.

墨亭にいらっしゃったことがある方ならご存じの方も多いでしょうが、現在、木戸の正面でみなさんをお迎えしている芸人が二人います。

一人は初代松旭斎天勝で、以前に私が監修を務めた、国立演芸場での「松旭斎天勝展」で使用した等身大パネル(展示終了後、もらってきました)がそれで、「どんな方なんですか?」といった質問にはじまり、「綺麗な方ですねえ」という感想を頂戴したりと、もはや墨亭の看板娘と言える存在です。

その天勝とともに、この正月から正面にいるのが、二代目神田伯山です。今日2/11より寄席で披露目がはじまった松之丞改め神田伯山は六代目ですから、四代前の伯山……ではなく、三代前の伯山が二代目です。そのあたりの数字のマジックであったり、個々の伯山については「墨亭講座」で話した通りなので、ここでは省略します(笑)。

二代目神田伯山(本名・玉川金次郎)は、天保14年(1843)に江戸に生まれ、初代神田伯山に入門し「伯勇」。その後「小伯山」を経て、伯山の二代目を襲名します。後年、弟子の小伯山にその名を譲り、その後に名乗ったのが「神田松鯉」(神田祭の洒落で初代)で、得意演目は初代譲りの『徳川天一坊』や『伊達騒動』、更に『宋朝水滸伝』といった話も読んだとのことです。大正10年没。

墨亭に飾られているその錦絵は、「俳優・ 諸芸/当利競」という明治6年頃に豊原国周によって描かれたもので、版元は落語の中で絵草紙屋の一つとしても登場する「具足屋」。絵の構成は、「駒絵」と呼ばれる上段に見える絵の中に、当時の寄席の看板や演者に演目、そして肩書きなどが描かれ、その演目の登場人物である人名が役者の似顔で描かれています。下段はその当時の人気歌舞伎役者の当たり役が描かれ、役者名と役名が示されているといった構図のもので、この二代目伯山の絵には『二刀伝』とあることから、演目は『宮本武蔵』であることが分かり、駒絵の人物名に見える「無三四」は「宮本武蔵」。そして歌舞伎俳優は中村翫雀(三世)が描かれています。

その弟子である三代目伯山は「次郎長伯山」「八丁荒らし」と呼ばれた名人。

四代目はおらず(初代伯山の息子であった二代目松鯉に贈与)、五代目は昭和に活躍した『大菩薩峠』の伯山と、歴代の伯山は講談界になくてはならない存在であっただけに、この度、六代目を襲名した新伯山のこれからの活躍にも期待が高まります。

墨亭での六代目襲名披露は予定にありませんが、二代目伯山が墨亭の一階で、今日も後人の芸を支え続けています。(雅)

※写真が「俳優・ 諸芸/当利競」の「二代目伯山」。額に入っているので、光の反射があります。実物は是非、墨亭で!w

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