2020.02.02.「小傳次・たけ平リレー落語の会」

令和2年の2月2日は、墨亭では2回目となる2人会。

ちなみに、主役の柳家小傳次師匠は、今年が入門「20周年」と、まさに「2」並びの会でした。昨夏の『真景累ヶ淵』に続いて、今回は同じ三遊亭圓朝作の『怪談牡丹燈籠』をリレー形式で演じました。

以下、パンフレットに書いた文章の一部を掲載します。(一部改訂)

★  ★  ★  ★  ★  ★  ★  ★  ★  ★  ★  ★  ★  ★

ここ墨田区は“近代落語の祖”とされる三遊亭圓朝が38歳から49歳までの壮年期に暮らした地で、その間に圓朝は日本文学にも大きな影響を与えた『怪談牡丹燈籠』の速記を出版しています。

今日の口演の中にも出て来るかも知れませんが、いわゆる主人公であるお露と新三郎が出会うのは亀戸の臥龍梅で、その後、お露にひと目惚れした新三郎は、柳島の寮(別荘)に暮らすお露に会いに行きます。その柳島は墨田区東部にあり、臥龍梅は十間川を挟んで反対側の江東区にあった名所で、『牡丹燈籠』もまた、『文七元結』や『塩原多助』『双蝶々』といった作品と同じように、墨田区を噺の舞台にした圓朝作品の一つです。

長い噺を複数の演者が聴かせる「リレー落語」がいつ頃から演じられるようになったのかはハッキリとは分かりませんが、昭和の名人に数えられる古今亭志ん生⑤と春風亭柳橋⑥による『おせつ徳三郎』や三遊亭圓生⑥と林家正蔵⑧による『真景累ヶ淵』が音にも残り、昨年末には柳家さん喬師と柳家権太楼師が『文七元結』に臨んだりもしています。

リレー落語の楽しさの一つは、芸風や芸筋の異なる二人が一つの長い噺をどのように続けて演じていくのかにあります。たけ平さんは明るさが身上の派手やかな芸風であり、小傳次さんは噺を世界を丁寧に描き出していこうとする高座です。

怪談の怖さは幽霊が出て来るからではなく、登場人物が見せる人間の素の心情や言動を、私たちが目の当たりにした時、自身にも経験があるからこそ跳ね返って感じる怖さにあります。それをどのように描き出していくのか。

墨亭からすれば、そんなご当地落語を、柳家小傳次と林家たけ平の両師がどのように演じるのかも楽しみなところです。

★  ★  ★  ★  ★  ★  ★  ★  ★  ★  ★  ★  ★  ★

長い『牡丹燈籠』の中から、「お札はがし」の場を林家たけ平師が、それに続く「栗橋宿」の場を柳家小傳次師が演じました。厳しい言い方を交えれば、まだまだ登場人物の心理描写に迫っていかなければならない課題はあるにせよ、圓朝が遺した落語の深い世界に、両師が今後どのような姿で臨んでいくのか。同時代を生き、両師の落語が深化していく様を見ていきたいと思わせる内容であったことは間違いありません。

次回は、GW前後に『子別れ』のリレーを聴かせてくれるとのこと。これまた楽しみな掛け合いが待ち受けているようで、今回、お越しいただけなかった方は、次回は是非ともお越し願えれば!と思っています。(雅)

0コメント

  • 1000 / 1000