墨亭・令和二年正月興行・その4
大変に遅くなってしまいましたが、正月興行・二日目【第二部】のご報告です。
やはり、席を持ったら、やってみたかったのが「寄席形式」の会でした。色物さんが入って、トリへとつなげていける番組形式です。初日の【第二部】は東京の両協会の競演を楽しむ番組でしたが、この日はいわゆる「色物席」を企画してみました。
トップバッターは賑やかでお目出度さ満点(?)を打ち出してくれる演者で!と、林家たけ平さんにお願いをしました。私の小さい頃、お正月の寄席と言えば、先代の林家三平師匠でした。「あっちからお坊さんが来て、こっちからお坊さんがやって来て、ぶつかってガンターン。それで和尚がツー(お正月)」。聴き手の気持ちをそらさない小噺がメインの高座でしたが、それが滅法楽しかったのを今でも覚えています。大師匠にあたる三平イズムを継ぐたけ平さんも、小噺をたっぷり披露してから、クスグリ沢山の地噺『大師の杵』を聴かせてくれ、正月興行の流れを作ってくれました。
二番手は、当席ではたけ平さんとリレー落語を披露している柳家小傳次さんです。この日の高座は『厄払い』。八代目桂文楽の音が残るも、最近は演じる人が少なくなった噺です。小傳次さんの落語の登場人物は心が温かいのが魅力です。この『厄払い』にしても、与太郎の可愛さとほのぼのとした様子が味わい深く、やがて二年目を迎えようとする墨亭の厄を払ってくれました。また出番の前後で、小傳次さんの前座時代の話やかつて開いていた落語会の話等々、懐かしい思い出を話すことができたのとともに、この墨亭でも思い出が作れればなあと思いました。
中入りを挟んで、手品師のダーク広和さんの高座です。昨年「ダーク広和 テーブルマジックの会」を企画したものの、東京を襲う台風で延期をしての開催。その時にも感じた、狭い空間で騙される手品・奇術の素晴らしさ。それを新春から味わってもらいたいと、お願いしての高座でした。出番前に、ふと墨亭の脇に生えている雑草の葉っぱをつまんできたダーク先生が、「これで手品をやりますね」。どんなネタであったのかは、この日の高座を見た方だけのお年玉ですが、即興性もまた手品の楽しさの醍醐味! 今年も「テーブルマジックの会」を開く約束をしました。
正月興行のトリ(紅白風に言う「大トリ」)は、昨年は『いだてん』の監修で大忙しだった古今亭菊之丞さんです。11月の墨亭での会では『二番煎じ』に『芝浜』と、十八番をいきなり披露。この日はというと、これぞ古今亭!の一席『抜け雀』をたっぷりと演じてくれました。そして一席終えた後には、お客様への手ぬぐいプレゼントじゃんけん大会。正月興行が盛り上がったのは言うに及ばず、菊之丞さんが演じた落語の中では、絵の中の「雀」が抜け出しますが、ここ墨亭が建つのは「鳩の街」。平和の象徴でもある鳩が飛び立っていくように、墨亭もまた一年、更に来年も正月興行が開けるように羽ばたいていきたいと思っています。(雅)
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