浪花節をレコードで聴く⑯

春日井おかめ「品川心中・夢の芝浜」(ローオンレコード)

●「品川心中」:品川の宿場女郎であるおそめは、今日も客が取れず、店の者から嫌味を言われる始末。こんな悔しい思いをするなら死んでしまおうと、貸本屋の金蔵に手紙を送り、一緒に心中することにする。店の裏の海にまず金蔵が飛び込み、いざ、おそめもというところで、店の者が芝の旦那が金を持って遊びに来たと告げに来る。お染は先に飛び込んでしまった金蔵に手を合わせるが、品川の海は浅瀬なので、そこで倒れていただけの金蔵はお染を許すまじと、仕返ししようと心に決める……。

●「夢の芝浜」:早くに起こされて向かった芝の河岸から、慌てて帰ってきた魚屋の勝五郎。82両の入った革の財布を拾って帰ってきたので女房は驚く。勝五郎はそれに喜んで、これで仕事に行かなくて済むと言って、酔い潰れて寝てしまう。翌朝、女房は財布を拾ってきたのは夢だと言い聞かせて亭主の尻を叩く。三年の間、真面目に働き、今では表通りに店を出すまでになった亭主勝五郎に、女房は大晦日に夢だと言ったのは噓だったと告白をする。女房の心を知った勝五郎はそれに感謝し、用意してある酒を飲もうとするが……。

●幼くして天才浪曲師として人気を得た春日井おかめの落語浪曲二題。二席目の『芝浜』にあえて「夢の」と付けるところがいかにも浪曲らしいw。『品川心中』は副題に「宿場しぐれ」とあるように、落語で言えば、金ちゃんのズッコケの様子が軸に描かれていくのに対し、ここでは品川の宿場女郎おそめの視点から、客を取れないという悔しさを胸に自分の行末を考え、そして思い切った行動に出る、そんな女の心に染み入るような展開で演じている。何しろ、いい節にいい啖呵。おそめのちょっとドジな様子を描く時に、妙音を出したりと三味線も程よく遊んでいて、楽しんでもらおうという浪曲全開。『芝浜』にしても、だらしない亭主を前に、強い心を持った女性のセリフに軽めの?巻き舌を使ってみたり、今風に言う細かなビブラートとこぶし、それにしゃくりを交えた節回しなど、ただ普通に「うまいなあ」と思わせる出来。昭和32年7月に引退するも、師・春日井梅鶯の死後、昭和51年に周囲の声もあって復帰。実は個人的にギリギリ間に合っている浪曲師で『関の弥太っぺ』聴いた記憶がある。もっと聴いておけば良かったと悔やまれる一人。曲師は松下信太郎。脚本は大西信行。(2021.10.12.)

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