浪花節をレコードで聴く③
三代目広沢駒蔵『水戸黄門漫遊記・尼ケ崎の巻』(ローオンレコード)
●水戸黄門が佐々木助三郎と渥美格之進、九紋龍の長次を引き連れての漫遊の途中、尼崎の宿屋町へと入って来ると、可愛らしい娘に声を掛けられ、小松屋という宿屋に泊まることに。ところがその宿は満足にご飯も給仕せず、何か訳がありそうだと、小梅という名の娘に話を聞いてみると、8年前に母親を亡くし、今は後妻のお熊にいじめられ、父親は3年前に倒れてから、三度の食事さえ食べさせることを許されず、裏の漬物小屋で寝ていると告白をする。そのお熊には戸田の伝五右衛門というやくざ者の男がいて、その夜、宿を訪ねてくると、宿屋の主人を殺して高跳びをしようという相談を持ち掛ける。それを耳にした黄門一行は、長次にわざと喧嘩を吹っかけさせてから、二人をお縄にして時の奉行を呼び出す……。
●浪花節はやはり大阪の芸能と思うことは今でもあるが、上方の浪花節の面白さを教えてくれたのが、初代京山幸枝若と、この二代目広沢駒蔵であった。「滑稽浪曲」と冠することもあったように、ケレン味たっぷりの唸りで、活舌もハッキリしていて、とにかく分かりやすくて、面白くて、楽しみやすい浪花節を聴かせてくれた。『左甚五郎』に『紀伊国屋文左衛門』なども聴いたが、やはり『水戸黄門漫遊記』が忘れられない。生で聴いたのは『瓢箪屋の巻』と『湊川の巻』。実はこの『尼ケ崎の巻』は聴いたことはなかった。レコードとは言え、その持ち味は失わず、クスグリ沢山、言葉遊びにたっぷりに演じている。ラストに向けて畳み込んでいくような啖呵の調子も良く、その調子のままに節に入っていくも、黄門がしたためた手紙の「裏を返せば、圀、圀、圀、圀が三つで光圀」等々、ケレンを含めて、水戸黄門ではお馴染みの勧善懲悪が待ち構えている因果応報の結末に向かっていくのがいい。曲師は小池菊江。(2021.09.03.)
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